青のある暮らし ―着物・器・雑貨

2019年7月2日(火)~28日(日)
 
7月1、8、16、22日は休館します。

江戸っ子と青

空や海の美しさをイメージさせる「青」という色彩は、江戸時代の人々を魅了し、その暮らしを涼やかに彩りました。とりわけ、現在「ジャパンブルー」と称され親しまれる藍は、江戸時代に木綿の普及と染色技術の向上によって藍染が庶民に広がったことから、浴衣や手ぬぐい、暖簾にさかんに使われていきます。さらに青色の文様をあらわした染付(そめつけ)の食器や植木鉢も広まり、青は日常生活のさまざまなシーンで用いられる色となったのです。浮世絵にも、暮らしのなかに青を取り入れた江戸市民の姿が驚くほど多く描かれています。
また本展は、陶磁器専門の美術館として知られる戸栗美術館と「青のある暮らし」を共同展覧会名とした連携展示です。浮世絵と陶磁器、それぞれの視点から、美しい青に満たされた江戸のライフスタイルに触れてみてください。

歌川国貞(三代豊国)「今様三十二相 すゞしさう」

月岡芳年「風俗三十二相 かいたさう 嘉永年間おかみさんの風俗」

青をまとう ―浴衣から刺青まで―

歌川国貞(三代豊国)「近世水滸伝 競力富五郎 中村芝翫」

現在のサッカー日本代表のユニホームは、伝統的な藍に由来する深い青で「サムライブルー」と呼ばれ親しまれています。浮世絵にも様々な身分や立場の人々が日常の衣服に青を用いた様子をとらえますが、とりわけ目を引くのは青と白のコントラストが美しい浴衣。女性たちは愛らしい草花文を散らしたものだけでなく、カニやタコなどのモチーフを大胆に配した浴衣も着ており、バラエティ豊かなデザインには目を見張るものがあります。さらには、江戸後期に大流行した刺青姿の男性を描く作品もご紹介いたします。当時人気を集めた独特の男性美にも触れてみてください。

歌川国貞(三代豊国)「十二月ノ内 水無月 土用干」

暮らしを彩る青

現代につながる食文化や服飾文化、園芸文化が花開いた江戸時代後期、市民の生活のなかにはさまざまな器や雑貨が溢れ、それらの多くにも青が用いられていました。例えば染付の皿や徳利、茶碗に植木鉢、そして藍染による手ぬぐいや前掛け、懐紙入れなど。ひとつひとつは小さなものであっても、青はさまざまに日常生活を彩り、広く人々に愛された色であったと言えるでしょう。

世界を魅了したジャパンブルー

江戸時代に育まれた青の文化は、明治時代に日本を訪れた欧米の人々には日本独特のものと感じられたようです。そもそも日本人の生活に根付いた藍を「ジャパンブルー」と命名したのは、明治7年に来日したイギリス人化学者ロバート・W・アトキンソンとされます。またギリシャ出身の小説家ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)も、明治23年に来日した際に目にした、家々の屋根や衣服、暖簾に青が多用された日本の情景の魅力を書き記しました。

浮世絵ブルー革命

葛飾北斎や歌川広重の空や海の青が美しい風景画が、国内外を問わず多くの人々を魅了しています。その日本の誇る北斎や広重の浮世絵風景画の誕生の背景には、実はベルリンブルー(プルシアンブルー、ベロとも)という新しい青色絵具の登場という出来事がありました。移り変わる空模様や水面を繊細に表現することを可能にしたベルリンブルー。その登場以前と以後の風景画を展示し、浮世絵史で起こった青をめぐる表現の変化についてご紹介いたします。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 東都浅草本願寺」

歌川貞秀「長崎丸山之図」

見どころの作品

歌川広重「名所江戸百景 神田紺屋町」

風にたなびく紺や茶色に染め上げた布の奥に、江戸城と富士山を望みます。神田紺屋町は、関東一円の藍の買い付けを許された紺屋頭の土屋五郎右衛門が治めており、付近に大勢の染物職人が住んでいたことから紺屋町と呼ばれるようになりました。干し場に布が吊るされる様子もこの地の風物だったのでしょう。藍で文字やグラデーション、市松模様などさまざまな柄が染め出された布は、当時の人々が多彩な模様を求め、紺屋がそれにこたえていたことを物語っています。

連携企画展

戸栗美術館 《青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼》

写真サンプル

染付 網目文 手鉢 伊万里 江戸時代(18世紀後半)

江戸の人々の暮らしを彩った「青色」を、陶磁器専門の美術館が伊万里焼を通してご紹介します。

会期:2019年7月2日(火)~9月22日(日)
会場:戸栗美術館(東京都渋谷区松濤1-11-3)
問合せ:03-3465-0070
http://www.toguri-museum.or.jp/

本展との入館料相互割引があります。それぞれの展覧会の半券をお持ちいただくと、太田記念美術館にては100円割引、戸栗美術館にては200円割引にてご覧いただけます。
1枚につき1名有効。入場券ご購入時にご提示ください。
イベント
学芸員によるスライドトーク

展覧会の見どころを担当学芸員が解説します。

日時
  • 2019年7月5日(金)14:00
  • 2019年7月10日(水)14:00
  • 2019年7月15日(月・祝)11:00  (各回約40分)
会場 太田記念美術館 視聴覚室(B1)
参加方法 申込不要 参加無料(要入場券)
*連携企画展「青のある暮らし」をより深く楽しむ*
7月の江戸文化講座では、本展にちなみ、青色の染付を中心とした陶磁器をテーマに開催します。
テーマ 青が結ぶやきものの世界
概要 江戸時代、日本のやきもの文化は大輪の花を咲かせました。今回の講座では、中世から江戸時代にかけての日本陶磁の歴史を学び、次いで青色の文様をあらわした染付が日本と世界において展開させた、豊かな美の世界について学びます。
開催日時 2019年7月13日(土)、 20日(土)、 27日(土) 14時00分~15時30分
会場 太田記念美術館 視聴覚室(B1)
第一講 7/13
  • 「日本陶磁史「超!入門」 中世の甕から江戸時代の食器まで」
  • 内容:鎌倉時代には生活道具の壺、甕、鉢だった「日本のやきもの」が、江戸時代には生活を彩る食器の主役へ。日本陶磁の中世から近世への転換、そして江戸時代における展開を中心に、日本陶磁の歴史をたどり、その魅力を発見する超!入門講座。
  • 講師:森 由美(陶磁研究家)
  • 東京藝術大学大学院美術研究科(保存科学)修了。戸栗美術館学芸員、日本陶磁協会研究員、その後、独立して陶磁器や伝統文化に関する執筆、講演、企画制作等を行う。戸栗美術館学芸顧問、NHK文化センター講師、佐賀・有田ふるさと大使。著書『ジャパノロジー・コレクション 古伊万里』(角川ソフィア文庫)ほか。「開運!なんでも鑑定団」出演。
第二講 7/20
  • 「連携企画展「青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼―」によせて」
  • 連携企画展「青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼―」より、江戸時代に誕生した初の国産磁器である伊万里焼の染付の変遷について、陶片を使ってご紹介いたします。流行をキャッチし、人々の生活を染めあげた伊万里焼の“青”を解き明かします。
  • 講師:小西 麻美(戸栗美術館アシスタントマネージャー・学芸員)
  • 実践女子大学大学院博士前期課程修了後、戸栗美術館学芸員として勤務。美術史学の知見を活かし、戸栗の学芸員講座や三越日本橋本店にて講演会を行う。連携企画展『青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼―』担当学芸員。現在、実践女子大学博士後期課程在学中。
第三講 7/27
  • 「旅する染付 ―青に結ばれる西アジア・中国・日本・欧州」
  • 中国で誕生し、江戸時代の日本に花開いた染付。そのルーツは中国・元朝と交易を結んだイスラーム世界、そして古代オリエントにまでさかのぼります。染付はまた、欧州の王侯貴族に愛され、遥かなる旅をしてゆきました。染付の〈青〉を軸に世界を眺め、各国の多様な美と価値観をさぐります。
  • 講師:柏木 麻里(出光美術館学芸員)
  • 慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得。出光美術館学芸員として「板谷波山の夢みたもの」「色絵 Japan CUTE!」「染付-世界に花咲く青のうつわ」ほか展覧会多数。詩人としても国際的に活動し、各国の詩祭に招聘されている。現代詩手帖賞受賞。著書『かわいいやきもの』(東京美術)『蜜の根のひびくかぎりに』(思潮社)など。
申込方法 申込書に必要事項をご記入の上、受講料を添えて、太田記念美術館までご持参ください。 6月8日(土)より受付開始、定員になり次第締め切ります。 ※郵送では申込みできませんので、ご注意ください。 受講料:5000円(パスポート会員は3000円) ※全3回、一括前納。税込。展覧会入場料を含む。
定員 60名(先着順)
問合せ 太田記念美術館 事務局 TEL:03-3403-0880 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
入館料
一般 700円
大高生 500円
中学生以下 無料
開館日カレンダー

休館日

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