『幕末の見立絵 -三代豊国・広重・国芳』
謎解きで楽しむ浮世絵
浮世絵によく見られる「美人画」や、「役者絵」、そして「風景画」。何気なく目にしているこれらのモチーフにも、実はちょっとした「謎掛け」が仕掛けられ、背後に別の意味や関係性が隠されていることが少なくありません。江戸の浮世絵師や版元たちが絵に込めたこれらの「謎掛け」は、和歌や俳諧などの文学、日本の歴史、歌舞伎、地方の地理や風俗などを踏まえたもので、幅広い教養があって初めて、作品の本当の意味を知ることができるのです。中でも三代歌川豊国や歌川国芳、歌川広重らによって幕末に多く描かれ、大流行したのが「見立絵」と呼ばれる手法。見立絵とは、連想ゲームのように、画中の題材から別のイメージを連想して楽しむ、知的な趣向の絵のことを言います。見立絵に隠された意味や関係性を読み解くことによって、私たちは江戸の人たちが楽しんだ、豊かな教養を垣間見ることができるのです。見立絵を通じて、「一歩深い」浮世絵の見方を学んでみませんか?絵に隠された関係性-1「文学」と「物語」
芭蕉の句と「助六」が結びつくのはなぜか?
上段は芭蕉の句「花の雲 鐘は上野か浅草か」。下段には、歌舞伎「助六」の一場面を描きます。花川戸の助六(花川戸は浅草の地名)と、句に見える「浅草」を結びつけたものでしょう。百人一首と歌舞伎の名場面との共通性は?
上段に見えるのは前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)の「もろともに あハれとおもへ 山さくら 花よりほかにしる人もなし」という和歌。下段には芝居の「妹背山女庭訓(いもせやまおんなていきん)」の「山の段」での久我之助を描きます。劇中に登場する桜の枝や、久我之助の雛鳥への恋心を、歌と結びつけたものでしょうか。絵に隠された関係性-2「地名」と「物語」
「平景清」と所縁のある神社は?
東海道の宿場、宮宿を背景に描き、歌舞伎の登場人物でもある平景清を手前に描きます。景清は宮宿にある熱田神宮に所縁があることから、両者が結び付けられているのでしょう。宿場町と同じ名前の名船頭は誰?
東海道の宿場である桑名宿を題名とし、大坂の名船頭であった桑名屋徳蔵が海坊主に遭遇し、問答してこれを退けるという伝承を描いています。言うまでもなく、両者を結びつけるのは「桑名」です。富士山の麓で作られる名物とは?
富士山にほど近い東海道の宿場、原宿を背景に描き、手前にはこの辺りの名物である富士の白酒にちなんで江戸の白酒売の姿を描いています。甲州を舞台に繰り広げられる歌舞伎の名作とは?
甲州屋(甲州は甲斐国のこと)という料亭の名前から、信玄・謙信を題材とした歌舞伎「本朝廿四孝」を連想し、登場人物である武田勝頼を人気役者八代目市川団十郎の似顔で描いています。<見どころの一点>
入館料
一般 | 700円 |
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大高生 | 500円 |
中学生以下 | 無料 |
イベント
学芸員によるスライドトーク
本展の担当学芸員が見どころをご案内します。
日程 | 12月4日(水)・14日(土)・18日(水) |
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時間 | 14:00~(40分程度) |
場所 | 太田記念美術館 視聴覚室(B1) |
参加方法 | 申込不要 参加無料(要入場券) |