名優たちの系譜 -幕末・明治の歌舞伎と現在-
企画展
2009年9月1日(火)~9月26日(土)
9月7・14・24日は休館となります。
はじめに
九代目市川団十郎、五代目尾上菊五郎、三代目沢村田之助―。本展でテーマとするのは、幕末に生まれ、江戸から明治へと移り変わる激動の時代を生きた役者たちの姿です。彼らは江戸の歌舞伎を継承する一方で、明治維新を経験し、西洋から押し寄せてくる文化や制度に翻弄されながら、歌舞伎のありかたを模索し続けました。重厚な歴史劇を志向し、歌舞伎を欧米の演劇に匹敵する芸術へ育てようとする流れに身を投じた、九代目市川団十郎。世話物を得意とし、団十郎と人気を二分した五代目尾上菊五郎。10代から天性の才能をうたわれ、人気絶頂となりながら難病に苦しみ、手足を切断してもなお舞台に上がり続けた悲劇の女形、三代目沢村田之助。その激動の生涯の一場面一場面を、当時の絵師たちは浮世絵に残しています。本展では幕末から明治にかけ、第一線で活躍した絵師たち―三代豊国、芳幾、国周、豊斎らが描いた作品を通して、名優たちの活躍をご覧いただきます。幕末から明治にかけて高度に発達した彫・摺による、役者絵の豪華な画面をお楽しみください。また浮世絵とあわせて、明治時代の役者たちの写真、そして彼らの名前を受け継いだ現代の歌舞伎俳優の写真を展示いたします。浮世絵に描かれた歌舞伎の世界が、現在にも脈々と続くものであることを再認識していただき、歌舞伎と役者絵という、深く関わりあう2つの世界が持つ魅力に触れてみてください。1.激動の時代を生きた名優たちのすがた
嘉永~安政年間(1848~1860)ころになると、七代目市川団十郎(五代目市川海老蔵)、三代目尾上菊五郎ら、それまで歌舞伎を牽引してきた大物役者たちが相次いで亡くなります。代わって歌舞伎界の中心に台頭してきたのが、初代河原崎権十郎(のちの九代目市川団十郎)、十三代目市村羽左衛門(のちの五代目尾上菊五郎)らの若い世代です。彼らが本格的に活躍を見せるのは、明治維新まであとわずかという時代。いわば江戸時代の歌舞伎を体現する最後の世代といえるでしょう。幕末から明治維新にかけての激動の時代を生きた、彼らの活躍を、三代豊国、国周、芳幾、芳年らの作品を通してご紹介いたします。2.幕末・明治の錦絵にみる精緻な彫・摺の世界
幕末になると、錦絵の彫・摺の技術はきわめて高くなり、明治に入ると西洋由来の顔料も多く用いられるようになりました。そのため、この時期の錦絵は鮮烈な色彩と精緻な彫・摺によりたいへん豪奢なものとなっています。国周の代表作である、具足屋版役者大首絵のシリーズや、当時発達しつつあった写真技術を意識した芳幾の「俳優写真鏡」など、高度な彫・摺の技術に裏付けられた作品を展示いたします。3.明治維新と劇場の興亡
江戸時代、江戸には幕府から公認された江戸三座(中村座、市村座、守田座)と呼ばれる歌舞伎劇場がありました。明治時代になると、劇場の上限は10に増やされ、激しい劇場間の競争が起きます。その中で、新富座や歌舞伎座などの新たな劇場が生まれる一方、中村座など旧来の劇場は衰退していきました。本展では、錦絵に描かれた劇場の様子を通して、幕末から明治維新にかけての劇場の移り変わりをご紹介いたします。
4.写真と錦絵との展示で感じる歌舞伎の伝統
現在活躍する歌舞伎役者の名跡の多くは、江戸時代から受け継がれているものであり、そのご先祖の活躍は錦絵に生き生きと描かれています。錦絵に描かれた役者たちの似顔絵は、本当に本人に似ているのでしょうか。そこで明治の役者を写した古写真をみると、当時の絵師たちが役者の風貌をいかにうまく捉えているかがよくわかります。本展では、古写真を展示することで、錦絵に描かれた役者たちの姿をよりリアルに感じていただくとともに、その子孫である現代の役者の写真もあわせてご紹介し、錦絵の時代と、現代の歌舞伎との間に流れる伝統を感じ取っていただける内容となっています。入館料
一般 | 700円 |
---|---|
大高生 | 500円 |
小中生 | 200円 |