江戸ごよみ ~夏から秋へ
はじめに
夏は花火や夕涼み、秋は七夕や月見、虫聞きと、江戸時代の人々は季節の移ろいにあわせてさまざまな行事や習慣を楽しんでいました。本展覧会では、浮世絵に描かれた夏から秋にかけての季節感あふれる江戸っ子たちの暮らしを紹介いたします。
夏
花火
歌川広重「江戸名所 両国花火」
隅田川の両国橋付近で打ち上げられた花火。真っ暗な夜空を赤く彩っている。
蚊帳
歌川国貞「星の霜当世風俗 蚊やき」
蚊の多い夏の夜には蚊帳が欠かせない。蚊帳に紛れ込んでしまった蚊を、燃やして退治しようとしている。
夕涼み
菊川英山「江戸両国すずみの図」
蒸し暑い夜、涼を求めるたくさんの船が隅田川の上でひしめきあっている。
夕立ち
歌川国貞「水無月冨士帰夕立」
突如空に黒雲が広がり、にわか雨が降り注ぐ。洗濯をしていたり帰宅途中だったりした女性たちは大慌て。
秋
月見
歌川国貞「十二月之内 文月 廿六夜待」
茶店の二階で楽しく食事をしながら、明け方にのぼる月の出を待つ女性たち。
月
歌川広重「月二拾八景之内 葉ごしの月」
散りゆく紅葉越しに眺める満月の輝き。
虫聞き
歌川広重「東都名所 道灌山虫聞之図」
秋の野には虫たちの美しい鳴き声が響き渡る。小さな子供連れの女性たちや、茣蓙を広げて宴会をしている男性たちの姿が見える。
七夕
歌川広重「不二三十六景 大江戸市中七夕祭」
江戸市中の家々の屋根に、短冊や吹き流しをつけた笹竹が空を覆い尽くさんばかりに飾られている。
<見どころの一点>
歌川広重「東都名所高輪廿六夜待遊興之図」
今ではすっかり行われなくなってしまいましたが、江戸時代には「二十六夜待」という、7月26日の夜に月が昇るのを待ってそれを拝む習慣がありました。二十六日の月ですので、月が昇るのは日の出直前の明け方頃。江戸っ子たちはわずかな時間だけ見えるこの月を眺めるために、夜更かしをして待ち続けていたのです。図は、二十六夜待の名所の一つである、江戸湾に面した高輪の風景。月が出るまでおとなしく待っている江戸っ子たちではありません。海辺には大勢の人が集まり、わいわいとにぎやかに時間を過ごしています。それらの見物客を目当てにしてか、天ぷらや蕎麦、寿司、団子、お汁粉など、さまざまな屋台の店が立ち並んでおり、江戸時代の食生活の様子もうかがい知ることができます。
入館料
開館日カレンダー