大江戸スター名鑑
はじめに
テレビや映画で活躍する俳優やタレント、あるいはスポーツ選手などの有名人の話題は、現代の人にとって大きな関心のひとつです。江戸時代の人たちにとってもそれは同じであったようで、人々は舞台で見得を切る歌舞伎役者に喝采をおくり、土俵上でぶつかり合う力士たちに興奮し、あるいは吉原を彩る高位の遊女にあこがれの念を抱きました。そうした江戸のスターたちの姿は、しばしば浮世絵に写し取られています。実際にスターを目の当たりにできない人たちも、浮世絵を通じて、スターたちの存在をより身近に感じたことでしょう。本展は、江戸の町を賑わした、様々な有名人たちに焦点をあてる展覧会です。市川団十郎、尾上菊五郎といった歌舞伎役者たちはもちろん、谷風などの伝説の力士たち、吉原の美しい花魁、あるいは元禄赤穂事件で知られる大石内蔵助や、ベストセラー小説『偐紫田舎源氏』の主人公、足利光氏のような架空の登場人物まで、様々なタイプの人気者たちをご紹介いたします。
1.江戸の大スター 歌舞伎役者
江戸市中の人々の人気を最も集めたのは、何といっても歌舞伎役者でしょう。市川団十郎や尾上菊五郎、坂東三津五郎など、何代にも渡って名優を輩出した大名跡がひしめき合い、大衆の羨望の的であった歌舞伎役者たち。江戸時代にはそんな彼らを描いた浮世絵が数多く出版されました。ここでは伝説的な名優たちのエピソードとともに、勝川派や歌川派などの絵師が描いた浮世絵を紹介します。2.力士や花魁 -市中の人気者たち
人気があったのは歌舞伎役者だけではありません。無類の強さを誇った伝説的な横綱、谷風に代表される力士、庶民には高嶺の花であった吉原の高級遊女、あるいは辻講釈で人気を得た深井志道軒など、さまざまな分野の有名人たちの姿が浮世絵に描かれています。ここでは、その時どきに市中の話題をさらった人気者たちの姿を紹介いたします。事件や物語の登場人物
江戸の人気者の中には、当時実際に起きた事件に関わった人物もいます。元禄赤穂事件を起こした大石内蔵助と赤穂義士たちは絶大な人気を得て、歌舞伎などの芝居にも取り入れられています。代表作『仮名手本忠臣蔵』は必ず大入りとなることから歌舞伎界の独参湯(どくじんとう、起死回生の妙薬のこと)とも言われ、初演から250年以上を経た現代でも人気の演目です。ここでは他に、『偐紫田舎源氏』の主人公、足利光氏や、『南総里見八犬伝』の八犬士など、大ベストセラーに登場する架空の人気者たちもあわせて紹介します。<見どころの一点>
東洲斎写楽「初代市川鰕蔵の竹村定之進」
今も昔も「えび様」は大人気
一度見たら忘れない、印象的な風貌。東洲斎写楽による大首絵の有名な1点です。描かれている役者は、初代市川鰕蔵(えびぞう)。前名を五代目市川団十郎と言い、昨今テレビなどでも話題の、十一代目市川海老蔵のご先祖さまに当たる人物です。市川家の芸を良く伝え、名人として絶大な人気を誇りました。一方で洒脱な性格の持ち主であったと伝えられ、狂歌を楽しみ、大田南畝ら当時一流の文化人とも交流があったとされています。本図は寛政6年(1794)5月に河原崎座で上演された「恋女房染分手綱」で竹村定之進を演じる初代市川鰕蔵を描きます。
入館料
一般 | 700円 |
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大高生 | 500円 |
中学生以下 | 無料 |