東海道五十三次の世界 -広重と国貞
後期:9月1日(土)~9月26日(水)
※前後期で展示替え
8月6・13・20・27~31日/9月3・10・18・24日は休館となります。
※8、9月展示の図録は作成いたしません。
東海道五十三次の世界 -広重と国貞展作品リスト[395KB]
はじめに
江戸と京を結ぶ街道、東海道。江戸時代後半には庶民の間でも旅への関心が高まり、多くの人々が伊勢神宮や京を目指して街道を行き交いました。そのような流れに眼をつけ、浮世絵師や版元は東海道をテーマとした浮世絵を制作します。中でも、空前の大ヒット作となったのが広重による保永堂版「東海道五拾三次之内」のシリーズ。以降、東海道ものは売れ筋のジャンルとして多数の作品が出版されていきます。
今回の展覧会がテーマとするのは、さまざまな絵師によって生み出された東海道ものの浮世絵。歌川広重の名作、保永堂版「東海道五十三次之内」はもちろんのこと、本展で注目するのは歌川国貞(のち三代豊国)による作品です。「保永堂版」と美人画を組み合わせた、通称「美人東海道」、広重とのコラボレーションによる作品「双筆五十三次」などを出品。その他にも、広重に先駆けて東海道を題材にした北斎の作品、近年の人気の高い国芳の作品など、バラエティに富んだ東海道ものの世界をご紹介いたします。これらの浮世絵を通して、江戸の人々が楽しみ、憧れた「旅」の雰囲気を感じ取って見てください。
江戸の人々が抱いた「旅」への憧れ―広重の名品を出展
江戸時代後半になると街道の整備が進み、また十返舎一九作『東海道中膝栗毛』の大ヒットなどによって庶民の旅への関心が高まっていきます。また実際にお伊勢参り、金毘羅参りなどの名目で旅にでる人たちも大勢いましたが、当時の旅は金銭的にも、安全面でも、決して気軽にできるものではなかったようです。そのような中、人気を博したのが東海道五十三次の各宿場を題材にした浮世絵。特に名作として知られ、出版当時も大ヒットしたのが歌川広重による保永堂版「東海道五拾三次之内」シリーズです。その叙情的な作風は、実際に旅に出られないひとたちの、旅への憧れをも満たしてくれるものだったのでしょう。本展では、「保永堂版」を含む広重の東海道ものの名作をご紹介いたします。「人物」の国貞と「風景」の広重、夢のコラボレーション作品とは?
歌川国貞は、役者絵などの人物画を描いたら右に出るものはいない、当時の大人気絵師。国貞は、得意の「人物」を描く腕前を生かした東海道ものの作品を手がけました。例えば広重の「保永堂版」の背景を引用し、前面に美人を描いた、通称「美人東海道」という作品や、歌舞伎役者ととともに東海道の宿場を描いた通称「役者東海道」などの作品を描いています。そんな「人物」の国貞と、「風景」の広重による豪華なコラボレーション作品といえるのが「双筆五十三次」というシリーズもの。本作は、広重が背景の風景画を、国貞(三代豊国)が前面の人物画を分担して描いたというユニークな作品です。北斎も、国芳も描いた東海道
江戸の人々が夢中になった東海道ものの錦絵。数多く出版された東海道ものを描いたのは、広重や国貞だけではありません。「冨嶽三十六景」で有名な葛飾北斎は、意外にも広重に先駆けて、人物描写を中心とした東海道もののシリーズを幾つも手がけています。東海道といえば広重という印象が強いですが、実は広重以前に東海道ものの絵師といえば北斎のことだったのです。また、近年人気の歌川国芳は、戯画や武者絵と並んで風景画も得意としましたが、広重と同じ頃に東海道の宿場を描いたシリーズ物を手がけています。人気絵師たちによる、さまざまな東海道ものの作品をご紹介します。<見どころの一点>
歌川広重「東海道五拾三次之内 三島 朝霧」(後期展示)
霧の立ち込める朝の大気を描く
東海道11番目の宿場町、三島宿。東海道最大の難所、箱根を越えてきた旅人、あるいはこれから箱根に向かう旅人たちが宿をとり、大いに賑わいました。本図は、朝霧の立ち込める三島宿の早朝の空気感を、階調の異なるシルエットを摺り分けて巧みに表現しています。画面右にやはりシルエットで描かれるのは、三島大社の鳥居。三島大社は東西に伸びる東海道の北側に位置していたことから、本図では手前が江戸方面、奥が京都方面と考えられています。駕籠にのる人物や、後方で乗掛馬に乗る人物は、まだ早朝だからか、うとうとと眠っているようです。早朝という時間設定や、朝霧という気候の巧みな描写が、まるで当時の江戸を旅しているかのような臨場感を見るものに与える秀逸な1点と言えるでしょう。
入館料
一般 | 700円 |
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大高生 | 500円 |
中学生以下 | 無料 |
イベント
学芸員によるスライドトーク
本展の担当学芸員が見どころをご案内します。
日程 | 8月3日(金)・11日(土)・19日(日)・/9月2日(日)・7日(金)・16日(日) |
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時間 | 14:00~(40分程度) |
場所 | 太田記念美術館 視聴覚室(B1) |
参加方法 | 申込不要 参加無料(要入場券) |