空からの眺め -大江戸八百八町
はじめに
東京の新名所、東京スカイツリー®が話題となっています。今も昔も、人々は高い所から眺望を楽しむことが大好きなようで、江戸時代には飛鳥山や愛宕山、五百羅漢寺の栄螺(さざえ)堂といった眺めの良い場所が人気を呼びました。浮世絵にはこうした場所に集まり、眼下に広がる景色を楽しむ人々が描かれています。
また浮世絵師たちは、まるで現代の高層タワーや、飛行機から地上を眺めたかのような俯瞰視点により、名所や街並みを描いた作品を残しています。今でこそ、インターネットで世界の各地の様子を自由に拡大して見ることができるようになりましたが、江戸時代の浮世絵師たちは、想像力と絵筆のみを駆使してはるか上空に視点を定め、これらの俯瞰による作品を描いているのです。
本展は、広重や北斎などの作品を通じて、空から当時の江戸の様々な場所を眺めるという企画です。江戸の浮世絵師たちの自由な想像力を感じることはもちろん、今の東京にも劣らない、江戸八百八町のにぎわいの様子をお楽しみください。
超高層タワーから江戸の町を眺めてみたら?
もし江戸時代に東京スカイツリー®が立っていたら?という想像を働かせてみましょう。周囲には浅草寺や三囲神社、新吉原の遊郭、猿若町の芝居といった江戸の名所・悪所がずらり。浮世絵師たちはこれらの場所を俯瞰視点で数多く描いています。展望台に登った気分で、当時の浅草周辺を見てみましょう。まるで航空写真? 俯瞰でみる江戸八百八町の眺め
まるでインターネット上でみるマップや、航空写真のように、浮世絵師ははるか上空に視点を定め、眼下に広がる街並みを描き出しました。選ばれた題材は両国や日本橋などの繁華街や、各地の神社仏閣、遊郭などさまざま。上空からみた江戸八百八町のにぎわいを感じてみてください。<注目の作品>
鳥の視点で江戸を見下ろす
歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」
画面上部に大鷲が描かれ、遙か下方には雪景が広がっています。鷲の視線の先には海を漂う一つの桶。遠景に霞んで見える山は筑波山です。鳥を大きく手前に捉えた大胆な構図が、まるで空を飛んでいるかのような感覚を見るものに与えます。広重の自由な想像力が遺憾なく発揮された作品といえるでしょう。深川十万坪とは、現在の江東区石島・千田・千石の海辺付近にあたります。
今も昔も人々は高い場所がお好き
現代の超高層タワーのように、江戸時代にも見晴らしの良い場所は名所として人々に親しまれました。浮世絵には、目黒の五百羅漢寺の栄螺堂、増上寺の三門といった建物や、飛鳥山、愛宕山など眺めの良い場所から景色を楽しむ人々が描かれ、当時の人気を偲ぶことができます。<見どころの一点>
左:歌川国芳 「東都三ツ股の図」(個人蔵)
右:葛飾北斎「冨嶽三十六景 東都浅艸本願寺」
昨今話題を呼んでいる人気の絵師、歌川国芳。国芳が描いた「東都三ツ股の図」には、東京スカイツリー®に似た不思議な塔が描かれているとして、新聞などで話題となりました。実は、このような塔は国芳だけではなく、北斎や広重の作品にも描かれています。この塔の正体とは一体何でしょうか?実は、そのヒントを国芳自身の絵にあるようです。「子供遊金生水之堀抜」という作品には、不思議な塔そっくりの井戸掘り用の櫓が描かれているのです。本展では、この「東都三ツ股の図」「子供遊金生水之堀抜」を特別出展するとともに、北斎や広重が同様の櫓を描いた作品もあわせてご紹介いたします。
入館料
一般 | 700円 |
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大高生 | 500円 |
中学生以下 | 無料 |
イベント
学芸員によるスライドトーク
本展の担当学芸員が見どころをご案内します。
日程 | 5月22日(火)
ご好評により日程追加! ※以下の日程は終了致しました。 5月3日(木・祝)/5月11日(金) |
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時間 | 14:00~(40分程度) |
場所 | 太田記念美術館 視聴覚室(B1) |
参加方法 | 申込不要 参加無料(要入場券) |